The International Institute of Touch Therapies
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ピーター・マカレス博士との出会い:

今から約10年前に国営保険機構NHS病院でありイギリス最大級のがん専門病院、クリスティホスピタルでがん患者に対してのグループワークや個別セッションなどを行っている補完療法チームのリーダーであるピーター・マカレス博士(以下、ピーター先生)にお会いしました。

実際お会いした時の印象はとても穏やかで温かく、一瞬にして優しい雰囲気に包み込んでくれる方でした。そして、 少しの時間をご一緒させて頂くだけでも、誰にでも親切で慈愛深く、紳士的で謙虚なお人柄であることが感じられました。

当時とても印象に残っているのは、「がん患者へはリアクションについては一切患者に伝えない」ということです。私自身が初めて補完療法を学んだときに、必ずクライアントに対して施術後起こりうる反応について伝えると学んでいたため、当時何故伝えないのかピーター先生に伺ってみました。「がん患者はがんや治療、手術などにより起こる痛みや不調、そして死への恐怖など常に恐れと不安を持ち続けている中、反応が起こる可能性があると聞くだけで、痛みと恐怖に反応が集中してしまい施術の効果が軽減してしまう為、心地よさ、楽になるといったことを感じてもらうことに集中してもらいたいから」とのことでした。そして「末期や重度の人の多くが既に辛い状態にいる為、施術後はポジティブな反応だけを感じる人がほとんどであり、リアクションを伝えることにより生まれるデメリットの方が多い」とのことでした。

その他にも術後や治療の副作用に苦しんでいる方々への圧のかけ方や携わり方など、現場でがんと闘っている人たちに日々対応しているピーター先生のこういった一つ一つの言葉に改めて気づかされることが多く、もっと知りたい! という気持ちが強まって行きました。

ピーター先生が病院で行っている施術の中には、切断した脚の幻肢痛に悩まされている患者に対して、鏡を使用した施術や、エアーリフレクソロジー(実際には無い脚に対してエアーで行っていく)など現場ならではの施術法を聞き驚いたことを覚えています。

ピーター先生は、がんの治療中や薬や術後の副作用、または死に直面する恐怖などへの補完療法を「院内で必要な方々が無償で受けられるために」、そしてまた、それを行う「セラピストたちがボランティアスタッフではなく、報酬を得られる環境にしよう」という志の元、この活動を続けまたエビデンスの発表もし続け、院内での補完療法の考え方に大きな改革を起こした方です。

まずピーター先生は、患者が必要な補完療法を受けるために必要な経費や機材そしてスタッフの資金を賄うために、人が集まる場所に出向いて、チャリティーセッションを行ったり、また演説を行い募金を募るところから始めました。

がん患者への治療以外のこういった補完療法は、ただの贅沢だと考えている人たちの理解を得るため、上記の方法で資金調達をし、常駐できるセラピストを複数雇用することで、患者たちが無償で予約なしに気軽に院内の補完療法ルームに来ることができる仕組みを作りました。

また、がんに伴う様々な不調のために補完療法を受けに来た患者たちから統計をとり、補完療法を受けていくことに関する様々なエビデンスを発表してきました。

こういった活動を繰り返していくことで信頼が深まり、今ではクリスティホスピタルの補完療法チームには30名のセラピストがおり、認知されていくことで他のがんセンターからも要望も増えていったため、がんケアへの補完療法を行うセラピストの育成や医療従事者への補完療法を広める活動も行ってらっしゃいます。

ピーター先生は前述のように日々患者と接し、臨床データを取り続け、研究し論文を発表し続けることで、補完療法を医療の現場で根付かせてきたということ、

また、膨大な時間と労力を要する作業を日々続けておられたことは本当に頭の下がる思いです。

ピーター先生の一貫し推進されていく力に深い尊敬の念を抱いたのはこの頃からでした。


次回は10年ぶりのピーター先生との再会です!